2010年8月28日土曜日

自衛隊みてきた。

「ドン!」

という音とともに、バスが揺れる。トランクを閉めた音だ、と誰かが言った。けれど、その後でまたドンドン!と空気が揺れて、あ、そうか。これも砲弾の音なのか。と僕は気付く。

 皮肉なもので、バスという壁いちまいを隔てて聞いた音のほうがリアルに感じる。昼間に観覧席から見ていたときは、こんなに体の芯に響く音だと気付かなかったのに。それはたぶん、僕たちの生活が、戦争というものと幾重もの壁を隔てているからだ。テレビを観るように、バスの窓越しに感じる方が、僕の知っている「戦争」に近い。つまり、いつかどこかで誰かがやってる、自分とは関係のないこと。

 僕たちは、戦争との距離を掴めずにいる。きっと、実際に戦争が目の前で起こってもそうだろう。目の前で起こっているからリアルかと言えばそんなことはない。鼓膜を突き破るような大きい音、炸裂する閃光、上がる土煙。こんな光景をいままで見たことがないし、すごいと思う。思うけれど、心に響くかといえば、そうでもない。正直、富士総合火力演習を見ても何も分からなかった。延々と続く火器の解説を聞きながら、まるで兵器の見本市にいるような感覚になる。砲弾が発射されると起こる「おおっ」というざわめきに混じって声を上げつつも、一体これは何を見せたいのか、そして何よりも自分は何を見たいのかがわからない。けれど少なくとも、動いている機械の、機械的な説明じゃない気がした。

 そう、聞きたかったのはきっと、耳を塞いでも響いてくる轟音じゃない。遠くからだと聞き取れないような、息づかいに耳を澄ませたかった。自衛隊にはどういう人がいて、どういう汗を流して、どういう悩みを抱えて国防の最前線に立っているのか。そのストーリーを、リアルさを、僕は知りたかった。目の前で兵器が動くのを見ればリアルかと言えば、そんなことはない。富士総合火力演習がただのショーに見えて、残念だった。

もっと想像力を働かせて、いろんなことをリアルに感じれるようになりたい、と思った1日だった。良い経験になった。







自衛隊の火力演習にゼミで行ってきた感想。
「自衛隊すごかった! これからもがんばってね!」という感想を書けという無言のプレッシャーみたいなのがあって、じゃあ絶対違うこと書こう、と思って書いた文章(笑)。


とにかく、
「リアルさ」に関しては簡単に譲れない。
目の前で見ればリアルかと言えばそんなことはない。

むしろこの火力演習は、
軍事マニアみたいな、「非現実」を求めてくる人に媚びたつくりになっている。
目の前で「非現実」をぶっ放せばリアルになるかというと、
兵器のディテールを語ればそれがリアルかというと、
そんなことないんじゃない。
少なくとも俺はそんなマニアックなことを聞きに来た訳じゃない。


でもじゃあ、
何を観に来たのかというとあんまりはっきり答えられなくて、
自分の立ち位置の曖昧さに絶望する。
俺の「リアル」は何なのか。
よくわからない。

そういう、よくわからなくなる、良い機会になった。
上の感想の最後、「良い機会になった」というのはなんか取って付けた感じがするけど、
まあ良い機会にはなったと思うよ。

そんなすぐに答えが出ることじゃない。
リアルさって何なのかとか、平和とか戦争とか。
いろんなことが頭の中をぐるぐる回る。
そういう良い機会になったと思う。ほんと。

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