2012年7月8日日曜日

湊かなえ「贖罪」

贖罪 (双葉文庫)贖罪 (双葉文庫)
湊 かなえ

双葉社 2012-06-06
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同級生を殺された4人の女の子が、
それぞれの思う「贖罪」をしていく、という話。


償いってきっとそんなことじゃないのに、
償いをしなさい、という言葉にこんなにも呪縛される。

「言葉に呪縛される」という認識でいるうちは、
償いはきっと、自分のひとりごとになってしまう。

償いは、誰かに対してするものなのに、
いつの間にか「自分が呪縛から抜け出すために」するものになっている。

自分のために何をするべきか、
という問いの立て方はきっとロジックとしては正しい。
正しいけれど、
たいがい冴えない答えしか出てこない。
冴えない答えなのに、それを答えとして引き受け無くてはならない。
そうやって、自分で自分を縛り付けていくことになる。



言葉に縛られて、
自分に縛られて。


そのストーリーがあまりにも酷くて、そのくせリアルで、
とても暗い気持ちになった。
自分にもきっとあるな、と思ってしまったから。

言葉に呪縛される側なのか、する側なのかは分からないけど。
思い出したくないと思っていることすら思い出したくないことって、
大なり小なり色々あるな、と思った。


巻末のインタビューで黒沢清が、
また、ホラーではないと言いましても、すでに死んでいる人間が生きている人間に隠然たる影響を及ぼす、つまり生者が死者の影に怯えるという大きな物語の流れは、怪談映画と共通するのかも知れませんね。
と言ってるけど、 
誰もが多かれ少なかれ、過去と死者に怯えながら生きていて、
ということは人生のストーリーは、ホラーのそれと良く似ている。

俺のこの毎日は、ホラーと何が違うんだろうな。
なんてぼんやり考えてしまう。

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